再雇用中の転職|契約途中の退職と時期の選び方、給付の扱い

自宅でノートパソコンに向かう60代の男性 転職活動
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再雇用で働き始めて、しばらく経ってから「このまま65歳まで続けていいのだろうか」と考え始める方は少なくありません。給与が下がったのは覚悟していたけれど、仕事の中身や職場の空気が思っていたのと違った。あるいは、知人から声がかかった。きっかけはいろいろです。

結論から言うと、再雇用中でも転職はできます。ただし、「いつ・どう辞めるか」によって、失業給付や高年齢雇用継続給付の扱いが変わります。ここを知らずに動くと、受け取れたはずのお金を取りこぼすことがあります。

この記事では、再雇用中の転職を「辞め方の分かれ道」から整理し、辞め方ごとに給付がどうなるかをまとめました。後半では、応募書類を見る側・質問する側にいた経験から、採用側が再雇用中の応募者に何を聞きたいのかも書いています。

「再雇用か転職か」をまだ決めかねている段階の方は、先に再雇用か転職か|定年前に直面した私の決断基準をどうぞ。この記事は、すでに再雇用を選んだ方が「その後」に転職を考えるときの話です。

再雇用中でも転職はできる|辞め方の分かれ道は3つ

再雇用の契約は、多くの会社で1年ごとの有期契約です。この「有期」であることが、辞め方を考えるときの出発点になります。分かれ道は大きく3つです。

辞め方 概要 向いている人
①契約の途中で辞める 契約期間中に退職を申し出る 転職先の入社日が決まっていて、待てない
②契約満了で更新しない 次の更新をしないと伝え、満了日で辞める 数か月なら待てる。円満に辞めたい
③65歳の再雇用終了まで待つ 再雇用を最後まで勤め、終了後に次を探す 急ぐ理由がない。65歳以降も働きたい

どれが正解ということはありません。転職先の都合、今の職場との関係、給付の扱いを天秤にかけて選ぶことになります。以下、①と②を順に見ていきます(③は65歳で再雇用終了、その後は?で整理しています)。

契約の途中で辞める場合|まず契約書と就業規則を見る

有期契約は「期間を守る」のが原則

有期契約は、本来、期間の途中で辞めないことを前提に結ばれています。正社員のように「退職の申し出から2週間」という民法の原則がそのまま当てはまらない場合があり、やむを得ない事情がなければ途中退職できない、と定められているのが原則です。

ただし、実務上は、話し合いで合意できれば途中でも退職できます。会社としても、辞める意思の固い人を引き留め続けることは少ないでしょう。大事なのは「原則としては期間を守るもの」と理解したうえで、お願いする姿勢で話を持っていくことです。

確認する書類は2つ

  • 再雇用契約書(または労働条件通知書):契約期間、更新の有無と判断基準、退職に関する条項
  • 就業規則(再雇用者向けの規程があればそれも):退職の申し出の時期、手続き

再雇用者向けの規程は、正社員の就業規則とは別に作られていることがあります。人事に「再雇用の場合の退職の手続きを確認したい」と聞けば、該当する箇所を教えてもらえます。この時点では転職のことを言う必要はありません。

申し出は早めに、理由は簡潔に

就業規則に「退職の1か月前までに申し出る」とあれば、それより早く伝えるのが礼儀です。再雇用者は引き継ぎ相手が限られていることも多く、後任の手当てに時間がかかります。

理由を細かく説明する必要はありません。「次の仕事が決まったので」で十分です。今の職場への不満を並べても、得るものはありません。

契約満了に合わせる場合|「更新しない」と伝える時期

更新の意思確認は満了の1〜3か月前が多い

会社側は、契約満了の前に「次の期間も更新するか」を確認します。時期は会社によりますが、満了の1〜3か月前に面談や書面で聞かれることが多いようです。このときに「更新しません」と伝えれば、満了日で円満に辞められます。

転職活動をするなら、この意思確認の時期から逆算して動くことになります。転職先に「入社は契約満了の翌月から」と伝えておけば、途中退職の交渉をしなくて済みます。

満了で辞めるときの離職理由

契約満了で自分から更新しないと伝えた場合、離職理由は「契約期間満了」です。自己都合退職とは区別されますが、本人が更新を希望しなかった場合、失業給付の扱いは次の節で見るとおり、更新を希望したのに更新されなかった場合(雇い止め)とは異なります。

辞め方で変わる失業給付(基本手当)

ここからはお金の話です。転職先が決まっていて、辞めた翌日から次の職場で働く場合、失業給付は関係ありません。問題になるのは、辞めてから次の仕事までに空白期間がある場合です。

自己都合なら給付制限は1か月

契約の途中で自分の意思で辞めた場合、原則として自己都合退職です。この場合、ハローワークで手続きをしてから7日間の待期期間があり、そのあと1か月の給付制限期間を経て、基本手当の支給が始まります。2025年4月の改正で、給付制限は2か月から1か月に短縮されました(5年以内に3回目以上の自己都合退職は3か月)。

契約満了なら、本人が更新を希望したかどうかで分かれる

契約満了での離職は、本人が更新を希望したのに更新されなかった場合は給付制限がつきません。一方、本人が更新を希望しなかった場合は、自己都合と同じ扱いで給付制限がつくのが原則です。「満了だから給付制限なし」とは限らない点は押さえておきましょう。

65歳の前と後で、給付そのものが変わる

もう一つ大きいのが年齢の線です。

離職時の年齢 受けられる給付 支給のかたち
65歳未満 基本手当 所定給付日数(被保険者期間により90〜150日など)を失業認定ごとに受給
65歳以上 高年齢求職者給付金 一時金(被保険者期間1年未満は30日分、1年以上は50日分)

65歳になる直前に辞めるか、65歳を過ぎてから辞めるかで、受けられる給付の総額が大きく変わります。「65歳の再雇用終了まで待つ」を選ぶ場合は、ここを知っておく必要があります。

65歳を過ぎてから辞めた場合の給付(高年齢求職者給付金)は、65歳以上の失業保険をご覧ください。

年金との関係

60〜64歳で特別支給の老齢厚生年金を受けている方は、基本手当を受給している間、年金が全額支給停止になります。現在60〜64歳の男性は特別支給の対象外ですが、女性は生年月日によって対象になる方がいます。該当する方は、年金事務所で確認してから辞め方を決めてください。

高年齢雇用継続給付は転職でどうなるか

再雇用で給与が下がった方の多くが受けている「高年齢雇用継続基本給付金」。これは転職するとどうなるのでしょうか。制度の基本は高年齢雇用継続給付|もらえる人・もらえない人で整理していますので、ここでは転職に関わる部分だけ書きます。

空白なく転職すれば、転職先でも続く場合がある

厚生労働省の案内には、基本手当を受けずに再就職した60〜64歳の方について、転職先でも高年齢雇用継続基本給付金の対象となることがある、と書かれています。前の会社を辞めてから新しい会社で雇用保険に入るまでが1年以内で、その間に基本手当などを受けていなければ、被保険者であった期間が通算されるためです。

この場合、転職先の賃金が「60歳到達時の賃金月額」の75%未満かどうかで支給が決まります。比較の基準は転職先の賃金ではなく、あくまで60歳時点の賃金です。転職で給与がさらに下がる場合は、給付でいくらか補われる可能性があるということです。

基本手当を受けてから再就職すると「高年齢再就職給付金」に変わる

いったん辞めて基本手当を受け、そのあと60歳以降に再就職した場合は、「高年齢再就職給付金」という別の給付になります。主な要件は次のとおりです。

  • 被保険者であった期間が5年以上
  • 再就職の前日に基本手当の支給残日数が100日以上
  • 再就職後の賃金が、基本手当の基準となった賃金日額×30の75%未満

支給期間は、残日数200日以上なら2年、100日以上200日未満なら1年ですが、いずれも65歳に達する月までです。基本手当を長く受けてから再就職すると、残日数が足りずに対象外になることがあります。

再就職手当とはどちらか一方

さらに注意したいのが、再就職手当との関係です。基本手当を受けている途中で再就職すると「再就職手当」(残日数に応じた一時金)を受けられる場合がありますが、同じ就職について、高年齢再就職給付金と再就職手当は両方受けられません。どちらか一方を自分で選ぶことになります。

一時金でまとまって受け取るか、65歳まで毎月の賃金に上乗せで受け取るか。賃金の下がり方と65歳までの残り期間で有利不利が変わるので、ハローワークで両方の見込み額を出してもらってから決めるのが確実です。

支給率は60歳到達日で決まる

高年齢雇用継続給付の支給率は、2025年4月以降に60歳になった方は上限10%、それより前に60歳になった方は上限15%のままです。転職しても、この区分は変わりません。

採用側は再雇用中の応募者をどう見ているか

ここからは制度ではなく、人の話です。私は職場で、応募書類を見る側・面接で質問する側にいたことがあります。そこで再雇用中、あるいは定年後の方の応募を受けたときに、採用側として確かめたかったのは、実はそれほど多くありません。

「なぜ今の職場の再雇用を続けないのか」

他の職場で再雇用中の方から応募があったとき、まず知りたいのはこれでした。再雇用は、本人が希望すれば65歳まで続けられるのが原則です。それをあえて断って外に出てくるのには、何か理由があるはずです。

ここで、前の職場の不満を聞きたいわけではありません。「仕事の中身が変わって、自分の経験が活かせなくなった」「この職種で働ける場所を探していた」など、前向きな理由があるかどうかを見ています。不満だけが理由だと、うちに来ても同じことが起きるのでは、と考えてしまいます。

「なぜこの職場なのか」

二つ目は、志望の理由です。これは年齢に関係なく聞くことですが、再雇用中の方の場合は「とにかく今の職場を出たい」が先に立っていて、応募先についてはあまり調べていない、ということが時々ありました。

応募先の仕事の中身と、自分の経験がどうつながるのか。ここが一言でも語れると、印象はまったく違います。60代の職務経歴書の書き方で書いた「経験の翻訳」が、面接でも効いてきます。

再雇用中の方が「なぜ今の職場を続けないのか」に書類で先に答える例文は、60代の志望動機の書き方と例文に載せています。

自分の職場からの再雇用希望は、ほとんど気にしない

一方で、自分の職場で定年を迎える方が再雇用を希望する場合は、こうしたことはほとんど気にしませんでした。人となりも仕事ぶりも分かっているからです。

逆に言うと、外から応募する再雇用中の方は、その「分かっている」が最初はゼロの状態です。採用側の不安は「この人はどんな人か」に尽きます。書類と面接で、それを埋めてあげる気持ちで臨むと、やり取りがかみ合います。

動く順番|先に内定、辞めるのは後

ここまでを踏まえて、再雇用中の転職の進め方を整理します。

  1. 契約書と就業規則を確認する:途中退職の条項、更新の意思確認の時期を把握する
  2. 在職のまま転職活動を始める:まず求人を「見るだけ」から。進め方は在職中の転職活動のやり方に書きました
  3. 書類を整える:60代の履歴書の書き方と職務経歴書の書き方。再雇用中の職歴欄の書き方もそこにあります
  4. 内定が出てから辞め方を決める:契約満了に合わせられるなら②、合わせられなければ①を交渉する
  5. 空白期間ができるなら、ハローワークで給付を確認する:基本手当・高年齢雇用継続給付・再就職手当の見込みを聞く

順番で大事なのは、4です。辞めてから探すと、空白期間が延びるほど給付の条件が変わり、採用側からも「なぜ辞めたのか」をより強く聞かれます。再雇用中は収入が途切れない強みがあります。その強みを手放さずに動くのが、60代の転職の基本です。

まとめ

  • 再雇用中でも転職はできる。辞め方は「契約途中」「契約満了で更新しない」「65歳まで待つ」の3つ
  • 契約途中で辞めるなら、まず契約書と就業規則。有期契約は期間を守るのが原則なので、早めにお願いする姿勢で
  • 自己都合の給付制限は1か月(2025年4月改正)。契約満了でも、本人が更新を希望しなかった場合は給付制限がつく
  • 65歳を境に、基本手当から高年齢求職者給付金(一時金)に変わる
  • 空白なく転職すれば、高年齢雇用継続基本給付金は転職先でも続く場合がある。基本手当を受けてからの再就職は高年齢再就職給付金になり、再就職手当とは二者択一
  • 採用側が再雇用中の応募者に聞きたいのは「なぜ今の職場を続けないのか」「なぜこの職場なのか」の2つ

制度の数字は改正で変わります。実際に動くときは、ハローワークと年金事務所で最新の扱いを確認してください。

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