在職中にできる転職活動とは|焦らず「見るだけ」から始める準備

自宅で落ち着いてノートパソコンに向かう50〜60代の男性 転職活動
Photo by Tima Miroshnichenko (Pexels)

定年が近づいてくると、「このまま再雇用でいくのか、それとも転職という道もあるのか」と、ふと考える瞬間があると思います。私自身もそうでした。

ただ、いざ転職を意識し始めると、「もう動かないと手遅れになるのでは」「早く決めなければ」と、気持ちばかりが焦ってしまうことがあります。

そんなときにお伝えしたいのが、在職中の転職活動には「焦らなくていい」という大きな利点があるということです。今の仕事を続けながら、リスクの少ない範囲で、少しずつ準備を進めていく。この記事では、そうした「在職中だからこそできる動き方」を、私が実際に考え、調べた経験をもとに整理してみます。

なお、転職活動を始める前の全体像や順序については、別の記事(55歳からの転職活動・準備と順序)で詳しくまとめています。あわせて読んでいただくと、流れがつかみやすいと思います。

在職中の転職活動は、なぜ焦らなくていいのか

転職活動と聞くと、「会社を辞めてから、退路を断って取り組むもの」というイメージを持つ方がいるかもしれません。しかし実際には、働きながら準備を進めるほうが、ずっと有利な面が多いのです。

理由はシンプルで、収入が途切れないからです。

毎月の給与が入ってくる状態なら、「条件の合わない求人に、生活のために飛びつく」という事態を避けられます。じっくり比較して、自分に合うかどうかを落ち着いて見極められる。この「焦らずに選べる」という余裕は、在職中にしか手に入らないものです。

一度退職してしまうと、貯金が減っていく不安と隣り合わせになります。そうなると、どうしても「早く決めなければ」という気持ちが先に立ち、本来なら見送るような条件でも妥協しやすくなります。在職という足場があるうちは、その心配がありません。

もう一つ、見落とされがちな利点があります。それは、「やっぱり今のままでいい」と判断しても、何も失わないということです。

調べてみた結果、「再雇用のほうが自分には合っている」と納得できたなら、それはそれで立派な結論です。在職中の準備は、転職を決断するためだけのものではなく、「自分はどうしたいのか」を確かめるための時間でもあります。動いてみて初めて、今の環境のありがたさに気づくこともあるでしょう。

つまり在職中の活動は、どう転んでも損をしないのです。だからこそ、焦る必要はありません。

まず「見るだけ」から始めてみる

とはいえ、「焦らなくていい」と言われても、何から手をつければいいのか迷うものです。

私がおすすめしたいのは、まず「見るだけ」から始めることです。

具体的には、転職サイトに登録して、どんな求人が出ているのかを眺めてみる。ただそれだけです。応募する必要も、誰かと面談する必要もありません。最初の一歩は、これで十分です。

「登録なんてしたら、すぐ営業の電話がかかってくるのでは」と身構える方もいますが、求人を閲覧するだけなら、それほど大げさなことにはなりません。気になる求人をブックマークしておく、条件で検索してみる——その程度から始めれば、心理的な負担はぐっと軽くなります。

なぜ「見るだけ」が大事かというと、世の中にどんな求人があるのかを知らないままだと、判断のしようがないからです。

「60代の自分に、そもそも求人なんてあるのだろうか」と漠然と不安に思っているうちは、何も前に進みません。ところが実際に求人を眺めてみると、「こういう職種なら募集があるのか」「この条件なら、今の自分でも届きそうだ」といった現実的な手応えが見えてきます。逆に「思っていたより厳しいな」とわかることも、立派な情報です。

不安の多くは、「わからない」ことから来ています。見るだけでも、その霧は少しずつ晴れていきます。

求人を眺めることに慣れてきたら、転職エージェントに登録して、担当者に相談してみるという段階もあります。ただ、これは「見るだけ」より一歩進んだ行動なので、まずはサイトで求人を見る習慣ができてからで十分です。

見ているうちに、自分の「輪郭」が見えてくる

求人を眺める習慣がつくと、面白い変化が起きます。「自分には何ができるのか」が、だんだん言葉になってくるのです。

求人票には、「こういう経験を求めています」という条件が書かれています。それを読みながら、「これは自分にもできる」「これは経験がないな」と照らし合わせていくうちに、自分の持っているものと、求められているものの距離感がつかめてきます。

この作業は、職務経歴の棚卸しにつながります。在職中の落ち着いた時間にこそ、やっておきたいことです。

「自分のキャリアなんて、特別なものは何もない」と感じる方は多いと思います。私も最初はそうでした。けれども、これまでやってきた仕事を一つずつ書き出してみると、当たり前にこなしてきたことの中に、他の人には簡単に真似できない経験が混じっているものです。それは、自分では気づきにくいものでもあります。

具体的な棚卸しのやり方や、職務経歴書への落とし込み方については、60代の職務経歴書・書き方と実例で詳しく書いています。在職中の準備として、求人を眺めることと並行して進めておくと、いざ動くときにあわてずに済みます。

棚卸しは、転職するかどうかに関係なく役に立ちます。「自分は何ができる人間なのか」を言葉にしておくことは、再雇用の場でも、これからの働き方を考えるうえでも、必ず支えになるからです。

在職中だからこそ、気をつけたい3つのこと

在職中の活動には利点が多いと書いてきましたが、働きながら動くからこその注意点もあります。ここは正直にお伝えしておきます。

1. 勤務先に知られないよう、情報の扱いに気をつける

転職を考えていることは、準備が固まるまでは勤務先に伝えないのが基本です。中途半端な段階で噂が広まると、職場での立場が気まずくなったり、引き止めにあって話がこじれたりすることがあります。

会社のパソコンやメールで転職サイトを見たり、求人に応募したりするのは避けたほうが無難です。私物のスマートフォンや自宅のパソコンを使う。これは基本的なことですが、つい忘れがちなので、最初に意識しておきたい点です。

2. 就業規則を確認しておく

会社によっては、就業規則で副業や競合他社への転職について定めがある場合があります。一般的には、転職活動そのものを禁止する規則は多くありませんが、念のため自社の規則に目を通しておくと安心です。

特に、同業他社への転職を考えている場合は、競業避止に関する取り決めがないか確認しておくとよいでしょう。判断に迷う部分があれば、会社の人事担当者や社会保険労務士など、専門の方に確認することをおすすめします。

3. 無理のない範囲で、時間を作る

在職中の活動は、どうしても仕事の合間や休日を使うことになります。ここで頑張りすぎて、本業に支障が出たり、体調を崩したりしては本末転倒です。

幸い、在職中は「いつまでに決めなければ」という締め切りがありません。週末に少し求人を眺める、思いついたときに経歴を書き足す——その程度のペースで十分です。焦らなくていいという最大の利点を、ここでも活かしてください。

「いつ動くか」は、今すぐ決めなくていい

最後に、多くの方が気にされる「タイミング」の話をしておきます。

「いつ動き出すのが正解か」——これは、今すぐ決めなくて大丈夫です。

在職中の準備の良いところは、情報収集と棚卸しを進めながら、ゆっくり考えられることにあります。求人を眺め、自分にできることを整理していくうちに、「この条件なら動いてみたい」と思える求人に出会うかもしれませんし、「やはり今の場所で続けよう」と腹が決まるかもしれません。

どちらに転んでも、その判断は、何も準備していない状態で迫られる決断より、ずっと納得のいくものになります。準備とは、選択肢を増やしておくことです。動くと決めたわけではなくても、「動こうと思えば動ける」状態にしておくこと自体が、心の余裕につながります。

だから、今この時点で「転職する/しない」を決める必要はありません。まずは見るだけ。整理するだけ。そこから始めれば十分です。

まとめ|在職中は、焦らず「準備」から

在職中の転職活動について、お伝えしてきたことを整理します。

  • 在職中は収入が途切れないため、焦らず落ち着いて選べる
  • 結果として転職しなくても、何も失わない
  • まずは「見るだけ」——転職サイトで求人を眺めることから始める
  • 求人を見ているうちに、自分にできることの輪郭が見えてくる
  • 在職中ならではの注意点(情報管理・就業規則・無理のないペース)に気をつける
  • 「いつ動くか」は、今すぐ決めなくていい

転職活動というと身構えてしまいますが、在職という足場があるうちは、その足場の安心感を存分に使えます。焦らず、小さく、できることから。それが在職中の動き方の基本です。

転職活動全体の流れや順序については、55歳からの転職活動・準備と順序でまとめています。次に何をすればいいか迷ったときは、そちらも参考にしてみてください。

注意: 本記事は私の個人的な体験と、一般的な情報をもとに書いています。転職活動の進め方や就業規則の解釈は、企業によって、また個人の状況によって異なる場合があります。詳細については、会社の人事担当者や社会保険労務士への確認をおすすめします。

著者:カズ

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