「再雇用になって給与が下がった——でも、もらえる給付金があると聞いた」。そんな方に知っておいていただきたいのが、高年齢雇用継続給付という雇用保険からの給付金です。
ただ、誰もがもらえる制度ではありません。条件を満たさないため対象外になるケースや、申請しないままもらいそびれるケースもあります。事前に整理しておくことで、自分が該当するかどうかをはっきりさせることができます。
この記事では、もらえる人ともらえない人の条件、支給額の目安、申請の流れまでをシンプルにまとめました。再雇用後の給与水準そのものについては、以前の記事で詳しく書いていますので、合わせて参考にしていただければと思います。
高年齢雇用継続給付とは|制度の概要
高年齢雇用継続給付は、60歳以降に賃金が下がった方を対象に、雇用保険から支給される給付金です。再雇用などにより収入が減った高齢の働き手を支えるために設けられた制度になります。
正確には2種類があります。
- 高年齢雇用継続基本給付金:60歳以降も同じ会社で継続して働く方が対象
- 高年齢再就職給付金:失業給付を受けた後、再就職した方が対象
どちらも仕組みは似ていますが、本記事では多くの方が該当する高年齢雇用継続基本給付金を中心に解説していきます。
支給率は、後述するルール改定により最大10%(または15%)。給与水準が下がった分の一定割合が、雇用保険から戻ってくるイメージです。なお、この給付金は非課税です。
この制度の背景には、定年後の再雇用などにより賃金が大きく下がるケースが多い、という日本の雇用環境があります。働き続ける意欲はあっても、生活水準の維持が難しくなる——そのギャップを埋めるための仕組みとして、長く運用されてきました。一方で、後述するように2025年4月の改定で支給水準が引き下げられており、今後の見直しも視野に入っている制度であることは押さえておきたいポイントです。
もらえる人|3つの条件すべてを満たす方
高年齢雇用継続基本給付金を受け取れるのは、以下の3つの条件をすべて満たす方です。
60歳以上65歳未満
支給対象になるのは、60歳の誕生日を迎えてから65歳の誕生日を迎えるまでの方です。65歳到達月の前月までが支給対象期間となります。
雇用保険の被保険者期間が通算5年以上
過去に雇用保険に加入していた期間が、通算で5年以上ある方が対象です。1社継続でなくても、複数の会社での雇用保険加入期間を合算できます。
60歳到達時点と比べて賃金が75%未満に低下
60歳到達時点の賃金を基準として、再雇用後の賃金が75%未満に低下していることが条件です。
たとえば、60歳到達時の月給が30万円だった方が、再雇用後に22万5千円(75%)に下がった場合は対象外。22万円(約73%)に下がっていれば対象になります。境界線が「75%」であることに注意が必要です。
なお、ここでいう「賃金」は、各種手当を含む実際の支給額(税引き前)で計算されます。基本給だけでなく、職務手当や役職手当などを含めた金額で判定される点に注意してください。
もらえない人|意外と見落とされがちなケース
「自分は対象だと思っていたら違った」というケースも少なくありません。逆に「自分は対象外だと思っていたら、実は該当していた」というケースもあります。意外と見落とされがちなパターンを整理します。
雇用保険に加入していない方
そもそも雇用保険の被保険者でない方は対象になりません。具体的には、以下のような方が該当します。
- 国家公務員、地方公務員:雇用保険ではなく共済組合に加入しているため
- 会社役員、自営業者:雇用保険の対象外
- 短時間労働の方:週20時間未満など雇用保険の加入要件を満たさない場合
公務員の方は雇用保険の制度ではカバーされませんが、退職手当や共済組合の給付など、別の仕組みが用意されています。「自分は対象外」とがっかりするのではなく、別の制度を確認するきっかけにすることをおすすめします。
賃金低下が75%以上に踏みとどまっている方
再雇用後の賃金が、60歳到達時の75%以上を保っている場合は対象外になります。「給与は下がったけれど、思ったほどではなかった」というケースです。
逆に言えば、給与の減額が一定以上大きくなければ、この給付金の対象にはならない、ということになります。
雇用保険加入期間が5年未満の方
通算で5年以上の雇用保険加入期間が必要なため、これに届かない方は対象外です。長くひとつの会社で勤めてきた方であれば問題ない条件ですが、転職を重ねていて雇用保険から外れていた期間が長い場合は注意が必要です。
65歳以上の方
65歳に到達すると、本制度の対象から外れます。65歳以降の働き方を支える別の仕組み(年金や雇用保険の他の給付)を確認することになります。
64歳11ヵ月の方が「あと1ヵ月だけ申請したい」と思っても、原則として65歳到達月の前月までで打ち切られます。受給を見越している場合は、早めに勤務先で申請状況を確認しておくことをおすすめします。
いくらもらえる?支給額の目安
2025年4月の改定で支給率が変わりました
実は2025年4月1日に制度が改定されました。それ以前と以後では、最大支給率が異なります。
| ルール | 最大支給率 | 適用される方 |
|---|---|---|
| 旧ルール | 15% | 1965年4月1日以前生まれ |
| 新ルール | 10% | 1965年4月2日以降生まれ |
判定の目安は、60歳到達日が2025年3月31日以前であれば旧ルール、4月1日以降であれば新ルールが適用される、という整理です。
なお、最大支給率になるのは賃金低下が大きい場合です。一般的には、旧ルールでは賃金低下率61%以下、新ルールでは64%以下のときに、それぞれ最大支給率が適用されます。賃金が75%に近いほど支給率は下がり、75%以上では支給されません。
支給額の例
60歳到達時の賃金が月33万円で、再雇用後に月20万円(約60%相当)に下がった方を例に試算してみます。
- 旧ルール適用の方: 月20万円 × 15% = 月3万円
- 新ルール適用の方: 月20万円 × 10% = 月2万円
支給は2ヵ月ごとにまとめて口座に振り込まれる形が一般的です。
旧ルールと新ルールの差は決して小さくありません。同じ条件でも、生まれ年が1年違うだけで月1万円(年12万円)の差が出るケースがあります。「自分はどちらのルールが適用されるのか」を確認しておくことは、見込み収入を考える上で重要なポイントになります。
具体的な手取り額の例については、再雇用後の給与水準についての記事で詳しく書いていますので、合わせて参考にしてください。
申請の流れ|誰が、いつ、どこに
申請主体は原則として勤務先
高年齢雇用継続給付の申請は、原則として勤務先の事業主がハローワークに対して行います。本人が直接申請することも可能ですが、多くの場合は会社が手続きを代行する流れです。
会社が申請する場合でも、本人が「受給資格確認票」などの書類に記入や同意を求められることがあります。書類が回ってきた際は、内容を確認した上で提出することになります。
申請のタイミング
申請には期限があります。
- 初回申請: 対象月の初日から4ヵ月以内
- 以後の申請: 2ヵ月ごとに継続申請
- 遡及申請の時効: 2年以内
申請されているか確認するには
会社が申請を失念しているケースもまれにあります。「自分は条件に該当するはずなのに、給付金が振り込まれていないようだ」と感じた場合は、勤務先の人事窓口、もしくは最寄りのハローワークに確認することをおすすめします。時効2年以内であれば、遡って申請できる可能性があります。
確認するときに用意しておきたいのは、60歳到達時の賃金がわかる資料(給与明細など)と、現在の賃金がわかる資料です。比較する材料があると、ハローワークでの相談もスムーズに進みます。
確認の窓口
不明点がある場合の相談先は次の通りです。
- 勤務先の人事担当者:申請の有無、提出時期について
- 最寄りのハローワーク:制度全般、自分が対象になるかの判定
- 年金事務所:年金との調整(支給停止)について
確認すべき3つのポイント|まとめ
最後に、押さえておくべきポイントを整理します。
- 対象に該当するか確認する — 60歳以上65歳未満、雇用保険加入5年以上、賃金が75%未満に低下、の3条件をすべて満たすか
- 勤務先の人事窓口に確認する — 該当するなら、申請が行われているかを早めに確認
- 年金との調整に留意する — 高年齢雇用継続給付を受給すると、老齢厚生年金の一部が支給停止されます(最高で標準報酬月額の4%、旧ルール適用者は6%)
3点目については、見落としやすい論点です。給付金が増えても、その分年金が減るケースがあるため、「合計でいくらになるか」という視点で確認することが大切になります。特に、特別支給の老齢厚生年金を受け取っている方は、年金事務所で個別の試算を依頼することをおすすめします。
「もらえる方」と「もらえない方」がはっきり分かれる制度です。まずは自分が条件に当てはまるかを冷静にチェックし、該当するなら漏れなく申請の確認をしておきたいところです。該当しない場合も、「対象外であること」がわかるだけで、見当違いな期待を持たずに済みます。
加えて、2025年4月の改定で新ルールに移行する方は、旧ルールと比べて支給率が下がっています。月単位では小さく見える差でも、4〜5年積み重ねると無視できない金額になります。受給見込みを家計のシミュレーションに早めに反映させておくと、再雇用後の生活設計に余裕が生まれます。
注意: 本記事は一般的な高年齢雇用継続給付の制度概要をもとに書いています。受給可否の判断や正確な支給額については、個人の状況によって異なります。詳細については、勤務先の人事担当者、お近くのハローワーク、または年金事務所への確認をおすすめします。
この記事を書いた人: カズ|60代前半・茨城県南在住・現在再雇用中。事務・管理・総務職を長年経験し、人事業務にも携わっていました。定年後の働き方について、同世代に向けてリアルな情報を発信しています。


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