60代の志望動機の書き方と例文|定年後・再雇用・パート・未経験

応募書類の志望動機欄にペンで記入する人の手 転職活動
Photo by Kampus Production / Pexels

※この記事にはプロモーション(広告)が含まれています。

履歴書の職歴欄まで書けたところで、手が止まる欄があります。志望動機です。

40年近く働いてきて、「なぜこの会社か」と改めて聞かれると、正直なところ「家から近い」「募集していた」「年齢で断られなさそうだった」が本音で、それをそのまま書くわけにもいかない。かといって「貴社の理念に共感し」と書き出すと、自分でも嘘くさく感じる。そういう方は多いのではないでしょうか。

実は私は、以前に人事に関わる業務に携わっていた時期があり、応募してくる方の書類を受け取って読む側にいたことがあります。今日はその経験を思い出しながら、60代が志望動機を書くとしたら何を押さえればいいのかを、例文つきで整理してみます。

お断りしておくと、私は今、実際に転職活動をしているわけではありません。あくまで「もし書くとしたら」という前提で組み立てた話として、また、この記事の例文はすべて架空のもの(人物も会社も架空で、私自身の経歴でもありません)として、お読みください。

見る側が志望動機から知りたかったのは、2つ

履歴書の書き方の記事で、見る側が履歴書から知りたかった5つのことを書きました。そのうち志望動機の欄で答えるのは、次の2つに集約されます。

  1. なぜこの仕事、この職場なのか
  2. 採用したら、何ができるのか

これだけです。「御社の理念に共感し」も「社会とのつながりを持ちたい」も、この2つのどちらにも答えていません。読む側は、立派な言葉を探しているのではなく、「この人を採ったら、うちの仕事がどう回るか」を思い描きたいだけなのです。

そして60代の場合、ここにもう一つ、読む側が口に出しにくい不安があります。年下の上司の下で働けるか。年齢層や男女比の違う職場になじめるか。体力は続くか。こうした不安に、聞かれる前に一言で先回りしておく。これが、60代の志望動機のもう一つの役目です。

志望動機の型|3つの文で組み立てる

2つの問いと、1つの先回り。志望動機の欄は、この3つにそれぞれ一文ずつ答える形で組むと、短くても伝わるものになります。

  • 文①:なぜこの仕事・この職場か
    応募先の仕事の中身と、自分の経験のつながりを書きます。会社の規模や理念ではなく、「この仕事」を選んだ理由です。
  • 文②:これまでの経験で、何ができるか
    やってきたことを、応募先の言葉に言い換えて書きます。この「翻訳」の考え方は、ポータブルスキルの記事と職務経歴書の記事で詳しく書きました。
  • 文③:どう働くつもりか
    年下の上司の下で、指示を受ける立場で働くこと。勤務条件や体力に問題がないこと。読む側の不安に、ここで先回りします。

順番は①②③が基本ですが、入れ替えても構いません。大事なのは、3つのどれかが抜けていないかを、書いたあとに確かめることです。

文字数の目安は、履歴書の欄に収まる範囲で、150字から250字くらい。3つの文を一文ずつ書けば、自然とこのくらいになります。長く書くほど伝わるわけではなく、むしろ読む側は、短くて3つがそろっている文のほうを信頼します。

場面別の例文4つ

ここからは、実際の形にしてみます。4つの場面を用意しました。いずれも人物・会社は架空です。例文のあとに、どの文が①②③にあたるかを種明かししていますので、ご自身の事情に置き換えるときの目安にしてください。

定年退職後に別の会社へ

職務経歴書の記事で見本に使った、長く1社の総務部門に勤めて定年退職した方が、別の会社の総務・事務職に応募する場面です。

前職では約38年間、総務部門で社内手続きの整備や各部署との調整、備品・施設の管理を担当してまいりました。貴社の求人にある「事務全般と社内調整」は、私が長く続けてきた仕事そのものだと感じ、応募いたしました。手続きの流れを整理して手順書にまとめること、部署の間に立って物事を進めることは、そのままお役に立てると考えております。定年後の勤務になりますが、体力と意欲に問題はなく、年下の方の指示を受けて働くことにも抵抗はありません。

  • 文①:「貴社の求人にある『事務全般と社内調整』は…応募いたしました」
  • 文②:「手続きの流れを整理して…お役に立てると考えております」
  • 文③:「定年後の勤務になりますが…抵抗はありません」

一文目は経歴の要約で、職歴欄と重なる部分です。欄が狭ければ削って構いません。数字を盛っていないことにも目を向けてください。「コスト○%削減」のような実績がなくても、何を・どのくらいの期間・どんな立場で続けてきたかが書いてあれば、読む側は自分の職場に引き寄せて想像できます。

再雇用中から他社へ

再雇用で働いている方が、他の会社に応募する場面です。再雇用中の転職の記事で書いたとおり、採用側がまず知りたいのは「なぜ今の職場の再雇用を続けないのか」でした。面接で聞かれる前に、志望動機で先に答えておきます。

現在、定年後の再雇用として前職と同じ会社で勤務しておりますが、再雇用後は担当がデータ入力と来客対応に限られ、長く携わってきた社内調整や後輩の指導に関わる機会がなくなりました。貴社の求人で「総務担当として部署間の調整と新人の受け入れを任せたい」とあるのを拝見し、自分の経験がそのまま活きる場だと考えて応募いたしました。手続きの整備と手順書づくり、各部署との折衝は、前職で係長として10年以上担当してきた仕事です。契約満了に合わせて退職する予定で、入社時期はご相談させていただけますと幸いです。

  • 文①:「再雇用後は担当が…活きる場だと考えて応募いたしました」(今の職場を続けない理由と、この職場を選んだ理由をひとつながりで)
  • 文②:「手続きの整備と手順書づくり…担当してきた仕事です」
  • 文③:「契約満了に合わせて退職する予定で…」(この場面では、体力より「いつ来られるか」が読む側の関心事です)

前の職場の不満は書いていません。「担当が狭まった」は事実で、「経験が活かせる場を探している」は前向きな理由です。この書き分けができているかどうかで、読む側の印象はまったく違います。

未経験の職種へ

総務の経験しかない方が、マンション管理員や施設管理の仕事に応募する場面です。「未経験だから書けることがない」と思いがちですが、ここは「翻訳」の出番です。

前職では総務部門で、備品や社用車、社屋の設備管理と、清掃・警備・設備保守の業者との契約や折衝を長く担当してまいりました。マンション管理の仕事は未経験ですが、建物と設備を日々見回って不具合に気づき、業者と連絡を取って直してもらう、という流れは、前職の施設管理と重なるところが多いと感じ、応募いたしました。居住者の方からの問い合わせには、各部署からの相談窓口を務めてきた経験で、落ち着いて対応できると考えております。早朝や休日の勤務にも対応可能です。

  • 文①:「マンション管理の仕事は未経験ですが…重なるところが多いと感じ、応募いたしました」
  • 文②:「居住者の方からの問い合わせには…落ち着いて対応できる」
  • 文③:「早朝や休日の勤務にも対応可能です」

未経験であることは隠さず、一言で認めたうえで、「経験のどこがつながるか」をすぐに続けます。読む側は「未経験かどうか」より、「仕事の中身を分かったうえで応募しているか」を見ています。

パートに応募

スーパーや事務補助など、パートの求人に応募する場面です。履歴書の志望動機欄は狭いことが多いので、2〜3文で足ります。

長く総務の仕事で、電話・来客対応と各部署からの問い合わせ窓口を担当してまいりました。人と接する仕事を続けたいと考え、自宅から通いやすい貴店の募集を見て応募いたしました。週3〜4日、午前中を中心に勤務を希望しております。

  • 文①②:一文目と二文目で、経験と「この仕事を選んだ理由」をまとめて
  • 文③:「週3〜4日、午前中を中心に…」

パートの場合、文③は「どう働くか」より「いつ働けるか」になります。細かいシフトの希望(曜日・時間帯の制約)は志望動機ではなく本人希望欄に書き、志望動機には大まかな働き方だけを入れるのが、欄の使い分けとして自然です。本人希望欄の書き方は履歴書の記事で触れています。

60代がやりがちな志望動機、3つ

見る側にいた経験から、「もったいないな」と感じた志望動機を3つ挙げておきます。自分が書くときにも、気をつけたいところです。

その1:自分の希望だけで終わる

「社会とのつながりを持ちたい」「これまでの経験を活かしたい」「健康のために働きたい」。どれも本音でしょうし、悪いことではありません。ただ、これだけだと、読む側は何を期待していいのか分かりません。自分の希望は書いてもいいのですが、そのあとに「だから、これができます」まで続けることです。

その2:前の職場の不満が透ける

「前の職場では年齢で仕事を減らされ」「再雇用の待遇に納得できず」。本人は事実を書いているつもりでも、読む側は「うちに来ても同じことを言うのでは」と考えてしまいます。不満ではなく、「経験が活かせる場を探している」という形に言い換えるだけで、同じ事情がまったく違って読めます。

その3:どの職場にも出せる文になっている

応募先の名前を別の会社に差し替えても、そのまま通る志望動機。これは、応募先の仕事の中身を調べていないことが、読む側にはすぐ分かります。求人票に書かれた仕事の内容から一言でも拾って、自分の経験とつなげる。文①は、そのためにあります。

3つに共通するのは、「読む側が知りたいことに答えていない」ということです。2つの問いと1つの先回り、という型に当てはめてみると、どれかが抜けていることに気づきます。

自己PRとの書き分け

志望動機と自己PR。この2つは何が違うのか、と迷う方も多いと思います。

厚生労働省が示している履歴書の様式例では、この欄は「志望の動機、特技、好きな学科、アピールポイントなど」という一つの欄になっています。つまり履歴書の上では、志望動機とアピールポイント(自己PR)は、はっきり分かれているわけではありません。

一方、職務経歴書には「自己PR」という項目を立てるのが一般的です。ですから、履歴書と職務経歴書の両方を出す場合、同じことを2回書いてしまうことが起きます。

私なりの整理はこうです。

  • 志望動機は、相手の職場の話。 応募先の仕事と自分の経験がどうつながるか。
  • 自己PRは、自分の話。 仕事への姿勢や人柄を、エピソードで。

履歴書の欄には志望動機(3つの文)を書き、自己PRは職務経歴書に回す。職務経歴書を出さないパート応募などでは、履歴書の欄に自己PRの要素を一文足す。こう分担しておくと、重なりが減ります。

自己PRを短く書くなら、たとえばこんな形です。

総務の仕事は、うまくいっているときほど気づかれない仕事です。手続きが止まらないように先回りして整え、困っている人がいれば自分から声をかけることを心がけてきました。一つひとつは小さな仕事ですが、それを長く丁寧に続けてきたことが、私の強みだと考えています。

ここには応募先の話が出てきません。それでいいのです。応募先とのつながりは志望動機で書いているので、自己PRでは「自分はどういう働き方をする人間か」だけを伝えます。職務経歴書の中での自己PRの位置づけと、もう少し長い見本は、職務経歴書の記事に載せています。

面接で聞かれても食い違わないために

志望動機は、書類で終わりません。面接では、ほぼ必ず「志望動機をお聞かせください」と聞かれます。

このとき、書類に書いた内容と、口で話す内容が食い違うと、見る側は「どちらが本音なのだろう」と考え始めます。逆に、書類の3つの文を、自分の言葉で少し膨らませて話せれば、それだけで一貫した印象になります。

暗記する必要はありません。文①②③の「何を言いたかったか」さえ覚えていれば、言い回しは変わっても構いません。面接で聞かれる他の質問と面接官の意図は面接の記事で、質問ごとの答え方と例文は答え方の記事で整理しています。

まとめ

長くなりましたので、最後に整理します。

  • 見る側が志望動機で知りたかったのは「なぜこの仕事・この職場か」「採用したら何ができるか」の2つ。60代はこれに「読む側の不安への先回り」が加わる
  • 志望動機は、①なぜこの仕事か/②何ができるか/③どう働くつもりか、の3つの文で組む
  • 再雇用中なら「なぜ今の職場を続けないのか」を先に答える。未経験なら経験のつながりを一言で。パートなら2〜3文で、細かいシフトは本人希望欄へ
  • 自分の希望だけ・前の職場の不満・どこにでも出せる文、の3つは避ける
  • 志望動機は「相手の職場の話」、自己PRは「自分の話」。履歴書と職務経歴書で分担する

志望動機は、応募書類の中でいちばん「自分の言葉」が出る欄です。立派に見せようとしなくて構いません。この仕事を選んだ理由と、できること、働き方。その3つを正直に書けば、書類は十分に役目を果たします。

注意:本記事は私の個人的な経験と、一般的な情報をもとに書いています。例文はすべて架空のもので、そのまま使うのではなく、ご自身の経験に置き換えてお使いください。応募書類に関する判断は個人の状況によって異なりますので、詳細については、ハローワークの相談窓口や、転職支援サービスのアドバイザーへの確認をおすすめします。

志望動機を考える前に読んでおきたい1冊

志望動機で過去の役職を前に出しすぎない、という考え方を深めたい人には、江上剛さんの『定年後の壁―稼げる60代になる考え方』(PHP新書)があります。元銀行員の著者が、定年後は過去の肩書きや自尊心を手放すことが大切だと説く本で、再就職や再雇用か独立かの選び方にも触れています。

Amazonで見る

楽天ブックスで見る

コメント

タイトルとURLをコピーしました