再雇用制度とは?仕組みと手続きを60代が解説

再雇用制度の手続きを示すイメージ 再雇用

「再雇用制度って、結局どういう仕組みなのか」「手続きはいつ、何をすればいいのか」——定年が近づいてきたとき、こういった疑問を持つ方は多いと思います。

かくいう私も、定年の1年ほど前まで、正直なところよくわかっていませんでした。「会社が続けさせてくれる制度があるらしい」という程度の認識です。人事業務にも携わっていた経験があるにもかかわらず、です。自分のことになると、意外に調べていないものだなと実感しました。

現在、60代前半で再雇用として働いています。茨城県南の会社に長く勤め、60歳で定年を迎え、そのまま再雇用の形で継続しています。この記事では、私自身の経験を交えながら、再雇用制度の仕組みと手続きの流れを、できるだけわかりやすく解説します。

同世代の方の参考になれば幸いです。


再雇用制度とは何か|60代が知っておくべき基礎

この章では、そもそも「再雇用制度」とは何なのか、似た言葉との違いや、誰が対象になるのかを整理します。

「継続雇用制度」との関係

再雇用制度は、「継続雇用制度」の一形態です。

まず全体像を理解すると、整理しやすくなります。

用語 意味
継続雇用制度 定年後も引き続き雇用するための制度全般
再雇用制度 定年でいったん退職し、新たな雇用契約を結んで働く形
勤務延長制度 定年を延長して、同じ雇用契約のまま働き続ける形

私が利用しているのは「再雇用制度」です。60歳の誕生日(定年日)に一度退職し、翌日から新しい雇用契約を結んで同じ会社に勤めています。雇用保険や社会保険の手続きも一度リセットされ、改めて加入し直す形になります。

「勤務延長制度」と比べると、身分上は「退職→再雇用」という区切りがあるため、退職金が定年時点で支払われる会社が多いです。私の会社もそうでした。

対象者の条件と適用範囲

再雇用制度の対象になるかどうかは、会社の就業規則や労使協定によって異なります

一般的な条件としては、以下のようなものが設けられていることが多いです。

  • 定年までの在籍期間が一定以上である
  • 直近の人事評価が一定水準以上である
  • 健康状態に大きな問題がない
  • 本人が希望していること

ただし、2025年4月から、継続雇用制度の経過措置が終了し、原則として希望者全員を65歳まで雇用することが完全に義務化されました。詳しくは後述します。

勤務形態は、フルタイム・週4日・短時間勤務など、会社によってさまざまです。私の会社ではフルタイム勤務が基本でしたが、週4日を選べる制度も用意されていました。

高年齢者雇用安定法による企業の義務

再雇用制度が整備されてきた背景には、高年齢者雇用安定法(高年法)の改正があります。

2013年の改正で、企業には以下のいずれかを導入する義務が課されました。

  1. 定年の廃止
  2. 定年の65歳への延長
  3. 65歳までの継続雇用制度の導入

この改正以前は、「希望者のうち会社が選んだ人だけ」を再雇用する仕組みが認められていました。しかし改正後は、段階的に「希望する全員を65歳まで雇用する」方向に進み、2025年4月からは経過措置も終了して完全義務化されました(一部の特例あり)。

さらに2021年の改正では、70歳までの就業機会確保が「努力義務」となりました。法律上の「義務」ではなく「努力義務」ですが、今後さらに延長されていく流れは続くと見ていいでしょう。

つまり、再雇用を希望する場合、よほどの事情がない限り、会社は断れない仕組みになっています。これは働く側にとって、大きな「安心材料」と言えます。


再雇用の手続きの流れ|定年前後にやること

この章では、実際の手続きをタイムライン形式で整理します。会社によって多少異なりますが、一般的な流れとして参考にしてください。

定年6か月前〜3か月前にやること

私の場合、最初のアクションは定年の約半年前に会社側からの面談でした。

人事担当者から「そろそろ定年後のことについてお話しさせてください」と声がかかり、個別面談の機会が設けられました。内容は概ね以下のようなものです。

  • 再雇用を希望するかどうかの意向確認
  • 再雇用後の勤務形態の希望ヒアリング(フルタイムか週4日かなど)
  • 業務内容の変更の可能性についての説明
  • 給与水準の目安の説明

この面談が実質的な手続きの出発点です。会社によっては書面で「継続雇用申出書」のような書類の提出を求められることもあります。

この時期にやるべきこと

  • 面談の内容を正確に記録しておく(メモを取る)
  • 再雇用後の給与水準の試算を自分でも行う
  • 家族(特に配偶者)と今後の生活設計について話し合っておく

給与については、定年前と比べて大幅に下がるケースがほとんどです。具体的な金額や減少幅については別の記事で詳しく公開していますので、ぜひあわせて確認しておいてください。

定年1か月前〜当月にやること

定年が近づいてくると、具体的な書類のやりとりが始まります。

会社への提出書類(一般的な例)

  • 継続雇用申出書(再雇用を希望する旨の書面)
  • 雇用形態・勤務条件の希望書

会社から受け取る書類

  • 新たな「労働条件通知書」(後述)
  • 退職に伴う書類一式(離職票、源泉徴収票、雇用保険被保険者証など)

私の場合、定年日の約1か月前に人事から書類が渡され、内容を確認して署名・捺印して返却する流れでした。慌てないためにも、定年の2〜3か月前から「どんな書類が必要になるか」を人事に確認しておくのがおすすめです。

また、健康保険や厚生年金については、再雇用後も継続して加入することになりますが、一度退職扱いになるため、手続き上は「喪失→再取得」の形をとります。実務的には会社が処理してくれることがほとんどですが、仕組みとして知っておくと安心です。

再雇用後の労働条件通知書のチェックポイント

労働条件通知書は、再雇用後の働き方を定めた重要な書類です。必ず内容を確認してから署名しましょう。

確認すべき主なポイントは以下のとおりです。

項目 確認のポイント
契約期間 1年更新が多い。更新の上限年齢(65歳まで等)も確認
業務内容 定年前と変わるか。変わる場合はどの範囲か
勤務時間・日数 フルタイムか、短時間・週4日等か
給与 基本給、各種手当、賞与の有無
社会保険 健康保険・厚生年金の加入継続の確認
更新基準 契約を更新する・しないの判断基準が書かれているか

「よくわからないけどサインしてしまった」という話も聞きます。わからない点は、署名前に人事担当者に確認してください。後から「そんな説明は受けていない」とならないよう、口頭でのやりとりもメモしておくことをおすすめします。


再雇用のメリット3つ|私が選んだ理由

なぜ私が再雇用を選んだのか。転職や引退という選択肢もあった中で、再雇用を続けることを選んだ理由を正直に書いておきます。

慣れた環境で働き続けられる

一番大きかったのは、これです。

長年働いてきた職場には、仕事の流れ、社内のルール、誰に何を聞けばいいかという暗黙知が蓄積されています。これが新しい職場では一からやり直しになります。

60代前半で新しい環境に飛び込むことが、気力・体力的にしんどいと感じていたのは正直なところです。「慣れた場所で、無理なく続けられる」というのは、シニア世代にとって大きなメリットだと思います。

もちろん、新しい環境に挑戦することに価値がないとは思っていません。ただ、私個人の状況と性格としては、慣れた環境の方が無理なく力を発揮できると判断しました。

通勤時間や生活リズムを変えなくて済む

転職すると、通勤ルートや勤務時間が変わることが多いです。長年染みついた生活リズムが変わることは、思っているより体にこたえます。

再雇用であれば、定年前と基本的に同じ条件で働けます(勤務形態が変わる場合を除いて)。生活リズムを維持できることは、健康管理の面でも重要だと感じています。

私の場合、勤務時間・通勤経路ともに定年前と同じです。これが日常生活の安定につながっています。

厚生年金の加入を継続できる

これは見落とされがちですが、重要なポイントです。

再雇用でフルタイム(または一定時間以上)勤務すれば、健康保険・厚生年金への加入を継続できます

特に厚生年金については、60歳以降も加入を続けることで「被保険者期間」が延び、将来受け取る年金額が増える可能性があります。また、会社が保険料の半分を負担してくれるため、国民年金に比べて有利な面があります。

年金の受給開始を65歳以降に繰り下げることを検討している方にとっては、再雇用中も厚生年金に加入し続けることは、受給額の最大化という観点でも選択肢になります。


再雇用のデメリット・注意点3つ|事前に知っておくべきこと

メリットばかりでなく、デメリットもきちんと伝えておきたいと思います。人事業務にも携わっていた経験から、多くの方が感じやすい点を中心に書きます。

給与が大きく下がる

これが最も大きなデメリットです。私自身も実際に感じています。

一般的に、再雇用後の給与は定年前の5〜7割程度に下がるケースが多いです。役職手当や各種手当がなくなることも多く、手取りベースで見ると「半分以下」になることも珍しくありません。

私の場合も、定年前と比べて収入が大きく下がりました。具体的な手取り額については、別記事で詳しく公開しています。数字を見てから「再雇用を選ぶかどうか」を判断する材料にしていただければと思います。

給与の大幅な減少に備えるためには、定年前から家計の見直しをしておくことが重要です。特に固定費(住居費、保険料、通信費など)を把握して、再雇用後の収入でも生活できる状態を作っておくことをおすすめします。

あわせて、「高年齢雇用継続給付」の対象になるかどうかも確認しておきたいポイントです。60歳到達時と比べて賃金が75%未満に下がった方は、雇用保険から月給の最大10〜15%が支給されます。条件や支給額の目安は、高年齢雇用継続給付|もらえる人・もらえない人を整理しましたで詳しく解説しています。

役職や業務内容が変わる場合がある

再雇用後は、定年前とまったく同じポジションで働けるとは限りません。

一般的には、管理職や役職から外れ、担当業務の範囲が絞られることが多いです。これを「降格された」と感じる方と、「責任が軽くなってかえって楽」と感じる方に分かれます。

私の場合は、以前担当していた業務に戻る形になりました。人事業務の経験が長かった分、定年後はその分野に特化する形で、範囲としては絞られましたが、仕事の内容自体は変わらず続けています。

人事の立場で見てきた範囲では、業務内容の変更に不満を感じる方が一定数います。「こんな仕事はしたくない」という場合に再雇用を辞退するケースもありました。事前にどのような業務を担当することになるかを、面談の段階で確認しておくことが重要です。

1年契約更新でキャリアが不安定になりやすい

再雇用は多くの場合、1年ごとの有期雇用契約です。

更新の可否は会社が判断するため、「来年も働けるかどうか」が毎年気になるという声は多く聞きます。健康上の問題や、会社の業績悪化によって更新されないケースも、現実にはあります。

また、有期雇用のため、「いつ終わるかわからない」という心理的な不安を感じやすい面もあります。

この点については、労働条件通知書に「更新する場合の基準」が明記されているかを確認することが重要です。また、並行して転職活動や副業の準備を続けることで、万が一の時のリスクを分散しておくのが賢明だと思っています。シニア世代の転職や副業については、本ブログでも今後詳しく取り上げていく予定です。


再雇用を断ることはできるか?|選択肢を持つために

再雇用は「必ず受け入れなければならない」ものではありません。この章では、断る場合の手続きと、その後の選択肢を整理します。

断る場合の手続きと注意点

再雇用の申し出を断ることは、もちろん可能です。

手続きとしては、会社側からの意向確認(面談や書面)の段階で「再雇用を希望しない」と伝えるだけです。特別な書類が必要な場合は会社から案内があります。

ただし、いくつか注意点があります

まず、一度断ると基本的には撤回できません。「やっぱり働きたい」となっても、同じ条件での再雇用は難しくなります。

次に、再雇用を断って退職扱いになる場合、雇用保険の給付(失業給付)の受給条件を確認しておく必要があります。自己都合退職の扱いになるか、定年退職の扱いになるかによって、給付開始時期や期間が変わる場合があります。ハローワークや社会保険労務士に事前確認しておくと安心です。

また、退職日と年金の受給開始時期のタイミングによっては、収入が途切れる期間が生じる可能性があります。再雇用を断る前に、年金受給の見通しを確認しておくことをおすすめします。

断った場合の選択肢

再雇用を断った場合の主な選択肢は、以下のとおりです。

① 転職する

シニア向けの転職市場は以前と比べて広がっています。経験やスキルを活かせる職場に転職することで、再雇用よりも好条件で働けるケースもあります。ただし、60代前半での転職活動は時間と労力がかかるため、定年前から準備しておくことが重要です。

② 独立・フリーランスとして働く

長年のキャリアを活かして、コンサルタントや業務委託として働く形です。特定の専門スキルがある方に向いています。収入は不安定になりやすい反面、働き方の自由度が高いというメリットがあります。

③ 完全引退する

年金や退職金、貯蓄で生活が成り立つ場合は、この選択肢もあります。ただし、65歳の年金受給開始まで空白期間がある場合は、資金計画を慎重に立てる必要があります。

どの選択肢を選ぶにしても、「再雇用をとりあえず続けながら準備する」という時間的な余裕があるのが理想です。私自身も、再雇用を継続しながら今後の選択肢を考え続けています。


まとめ|再雇用を選ぶ前に確認すべき5つのポイント

最後に、再雇用を検討する際に確認しておくべきポイントをまとめます。

  1. 給与水準を事前に試算する 定年前に再雇用後の給与を確認し、生活費とあわせて家計をシミュレーションしておく。
  1. 業務内容・勤務形態を面談で明確にする 「前と同じ仕事か」「フルタイムか短時間か」を面談の段階で確認し、曖昧なまま署名しない。
  1. 労働条件通知書を確認してから署名する 契約更新の基準と更新の上限年齢(65歳まで等)は必ずチェックする。
  1. 社会保険の継続条件を確認する 厚生年金・健康保険を継続できる勤務条件かどうかを確認する。短時間勤務を選ぶ場合は特に注意。
  1. 再雇用以外の選択肢も視野に入れておく 転職・独立・引退という選択肢も、定年前から並行して考えておくと安心。

再雇用制度は、使い方次第で「安心して60代を働く」ための有力な手段になります。ただし、条件や仕組みをきちんと理解した上で選ばないと、「こんなはずじゃなかった」という事態になりかねません。

この記事が、定年前後の判断材料の一つになれば幸いです。


注意: 本記事は私の個人的な体験と、一般的な制度の概要をもとに書いています。再雇用に関する手続きや法律の解釈は企業によって異なる場合があります。詳細については、会社の人事担当者や社会保険労務士への確認をおすすめします。


この記事を書いた人: カズ|60代前半・茨城県南在住・現在再雇用中。事務・管理・総務職を長年経験し、人事業務にも携わっていました。定年後の働き方について、同世代に向けてリアルな情報を発信しています。

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