再雇用か転職か|定年前に直面した私の決断基準

再雇用か転職かの選択を象徴するイメージ 再雇用

定年が近づいてきたとき、「このまま会社に残るか、それとも転職するか」という問いが頭をよぎる方は、少なくないと思います。

私もそうでした。50代の半ばを過ぎた頃から、なんとなく考え始めていました。「自分はどうするのか」「再雇用で続けるのが正解なのか」「まだ転職という選択肢があるうちに動いておくべきではないか」——。

答えが出ないまま時間が過ぎ、気づけば60歳の定年を迎え、再雇用という形で今の職場に残ることになりました。

現在、60代前半で再雇用として働いています。茨城県南の会社に長く勤め、事務・管理・総務の業務を経験し、人事業務にも携わっていました。そんな私が、「再雇用か転職か」という問いをどう考え、どう選んだか。できるだけ正直に書いてみます。

まだ時間的な余裕がある方にとって、少しでも参考になれば幸いです。


「再雇用か転職か」で悩む人が増えている理由

この章では、なぜ今この問いで悩む人が増えているのか、その背景を整理します。

60代の転職市場の変化

少し前まで、「60歳を超えてからの転職は現実的ではない」という空気がありました。実際、私が50代だった頃も、周囲では「定年後は再雇用が当たり前」という感覚が強かったように思います。

ところが、ここ数年で状況は変わってきています。

高年齢者雇用安定法の改正によって、70歳までの就業機会確保が企業の努力義務となりました。それに伴い、シニア層を対象とした求人は以前と比べて増えてきています。「60代でも転職できる」「55歳からでも次のキャリアを作れる」という選択肢が、現実的なものとして見えるようになってきました。

ただし、「市場が広がっている」とはいっても、若年層と同じ条件で転職市場に出られるわけではありません。求人の幅、年収の条件、採用難易度——これらは年齢によって変わります。「以前と比べて選択肢が増えてきている」という程度の認識が、現実に近いと私は思っています。

再雇用だけでは生活が厳しい現実

もう一つの背景として、再雇用後の給与水準があります。

一般的に、再雇用後の収入は定年前の半分以下になるケースも珍しくありません。私自身もそうでした。具体的な手取り額については別の記事で詳しく公開していますが、この収入の減少は、老後の資金計画に直接影響します。

「再雇用で収入が半分になるなら、転職して少しでも高い収入を確保したほうがいいのではないか」——こう考える方が増えているのは、自然なことだと思います。

年金の受給開始まで数年のギャップがある方や、住宅ローンや教育費が残っている方にとっては、「再雇用のままでいいのか」という問いは切実です。

なお、再雇用後の給与減を一部補う仕組みとして、雇用保険の「高年齢雇用継続給付」があります。賃金が60歳到達時の75%未満に下がった場合、月給の最大10〜15%が支給される制度です。再雇用と転職の収入を比較する際、この給付金の有無も判断材料の一つになります。詳細は高年齢雇用継続給付|もらえる人・もらえない人を整理しましたを参考にしてください。

「キャリアの最終章をどう過ごすか」という新しい問い

そして、もう少し深いところの話をすると。

お金や待遇だけでなく、「残りの働く時間をどう使うか」という問いを、50代後半になると考え始める人が増えていると感じます。

「定年まで同じ会社で働いてきた。残り5〜10年、同じ場所で続けることが自分には合っているのか」「まだ動けるうちに、別の場所で違う経験をしてみたかった気持ちはないか」——そういった問いに向き合う時期が、ちょうど定年前後なのだと思います。

「再雇用か転職か」は、単に収入や条件の問題ではなく、自分のキャリアとどう向き合うかという問いでもあります。


再雇用を選ぶメリット・向いている人

再雇用を選んだ場合のメリットと、向いている人の特徴を整理します。

メリット3つ

① 慣れた環境で働き続けられる

長年培った職場の人間関係、仕事の流れ、暗黙のルール。これらはすべて、新しい職場では一からやり直しになります。「慣れた場所で無理なく続ける」という安心感は、シニア世代にとって小さくないメリットです。

② 通勤・生活リズムを変えなくて済む

転職すると、通勤経路や勤務時間が変わることがほとんどです。長年染みついた生活リズムが変わることは、体への負担が思っているより大きい。再雇用であれば、定年前とほぼ同じ生活ペースを維持できます。

③ 厚生年金・健康保険の加入を継続できる

フルタイムで再雇用された場合、健康保険・厚生年金への加入を継続できます。60歳以降も厚生年金に加入し続けることで被保険者期間が延び、将来の年金額が増える可能性があります。社会保険の観点での安定は、転職ではなかなか確保しにくい部分です。

再雇用制度の仕組みについては、別の記事で詳しく解説していますので、あわせてご確認ください。

向いている人の特徴

以下に当てはまる方は、再雇用が向いている可能性が高いです。

  • 現在の職場に大きな不満がない
  • 人間関係や職場環境に慣れていて、変化に強いストレスを感じる
  • 生活費が再雇用後の収入でも賄える見通しがある
  • 年金受給まであと数年という時期で、つなぎとして考えている
  • 健康上の理由で大きな環境変化を避けたい

「消極的な再雇用」であっても、選んだこと自体に意味があります。大切なのは、「なんとなく残った」のではなく、自分なりに考えた上での選択であることです。


転職を選ぶメリット・向いている人

一方で、転職を選ぶことのメリットと向いている人の特徴も整理します。

メリット3つ

① 収入アップの可能性がある

再雇用後の給与よりも高い水準で採用される可能性があります。特に、特定の専門スキルや経験を持つ方は、それを評価する職場に転職することで、再雇用よりも有利な条件を得られるケースがあります。

② 新しいキャリアを作れる

「定年後は別の仕事に挑戦してみたかった」「これまでとは違う業種・職種を経験してみたい」——そういった思いがある方にとって、転職は最後のチャンスになるかもしれません。55〜59歳のうちに動き始めれば、キャリアの幅を広げる余地はあります。

③ 人間関係をリセットできる

長年同じ職場にいると、人間関係の煩わしさが蓄積されることもあります。転職は、そのしがらみをリセットできる機会でもあります。「新しい場所で、新しい関係性の中で働く」という選択は、気持ちの面での刷新効果があります。

向いている人の特徴

以下に当てはまる方は、転職を真剣に検討する価値があると思います。

  • 現在の職場に大きな不満があり、定年後も同じ環境で続けることに抵抗がある
  • 特定の専門スキルや資格があり、それを活かせる市場がある
  • 健康状態が良好で、新しい環境への適応力に自信がある
  • 家族の理解と協力が得られる状況にある
  • 転職活動を定年前から時間をかけて準備できている(または準備してきた)

最後の条件が重要です。転職は、思い立ってすぐに成功するものではありません。特に55〜58歳のうちから情報収集と準備を始めておくことが、選択肢を広げる最大の鍵になります。


私が「再雇用」を選んだ理由|転職を考えながらも動けなかった本音

ここからは、私自身の話を正直に書きます。最もリアルな部分です。

転職を考えてはいた

「転職を考えていなかった」と言えば、嘘になります。

50代の半ば頃から、漠然とですが「このまま定年まで同じ会社で終わるのか」「まだ動けるうちに、違う職場を経験してみることも選択肢ではないか」という気持ちはありました。

ただ、「考えていた」と「準備していた」は、まったく別の話です。私の場合、転職を考えていても、具体的に動くことはありませんでした。

転職情報を本格的に調べたこともありませんでした。エージェントに相談したこともありませんでした。ただ、頭の片隅に「もしかしたら」という可能性を置いていただけです。

業務の忙しさと精神的な余裕のなさ

正直に言うと、当時は仕事が忙しく、腰を据えて転職について考える時間も精神的な余裕も、なかなか取れませんでした。

「今は繁忙期だから、落ち着いたら考えよう」——そう思っているうちに、繁忙期が終わっても次の案件が始まり、時間が過ぎていきました。気づけば、50代後半はあっという間に過ぎていました。

「余裕ができてから考えよう」は、結果として「考えないまま定年を迎える」につながる。今振り返ると、そういうことだったと思います。もし転職を真剣に選択肢に入れたいと思っていたなら、忙しくても、少しずつでも準備しておくべきだった——これが、今の私の正直な気持ちです。

結果として再雇用を選んだ自分への振り返り

こうして再雇用になり、以前担当していた業務に戻る形になりました。

後輩が育ち、組織が変わり、かつて自分が担っていた役割を別の人が担っている。そんな環境の中で、以前の業務に戻る。それは、正直に言えば複雑な気持ちがまったくないわけではありませんでした。

ただ、同時にこう思う部分もあります。長年積み上げてきた経験やノウハウは、今の業務で確かに活きている。人事業務の経験があるからこそ、後輩や若い担当者のサポートができる場面もある。「自分が培ってきたものが無駄になっているわけではない」という感覚は、再雇用として働く中での、一つの手応えです。

ふとした瞬間に「もし転職を試みていたら、どうなっていたのだろう」と考えることは、今もゼロではありません。それも含めて、正直なところです。

ただ、「後悔している」かと言えば、そうとも言い切れない。安定した環境で、自分のペースで働けている。それは、再雇用という選択が持つ価値の一面だと思っています。

一つ確かなことは、「もっと早くから準備しておけばよかった」という気持ちが、今もあるということです。時間的な余裕があれば、再雇用を選んだとしても、より納得した形で選べたと思います。それが、読者の方に一番伝えたいことかもしれません。


比較表でまとめてみた|あなたはどちら向き?

ここまでの内容を、表にまとめます。どちらが正解かではなく、自分の状況に照らして考える材料にしてください。

比較項目 再雇用 転職
収入の変化 大幅に下がる(定年前の5〜7割以下が多い) 条件次第で維持・アップの可能性あり
環境の変化 ほぼ変わらない 大きく変わる
社会保険 継続加入しやすい 条件次第(新職場で確認が必要)
転職活動の手間 不要 相当の時間・エネルギーが必要
キャリアの可能性 現職の延長 新しい方向性を作れる
精神的な安心感 高い(慣れた環境) 低い(不確実性がある)
準備が必要な時期 特になし 定年の3〜5年前から

再雇用が向いている方のまとめ

  • 今の職場に大きな不満がなく、安定を優先したい
  • 年金受給まで数年のつなぎとして割り切れる
  • 生活費が再雇用後の収入で賄える

転職が向いている方のまとめ

  • 今の職場に不満があり、新しい環境を求めている
  • 特定のスキルや経験を活かせる求人が見込める
  • 定年前から時間をかけて準備してきた、またはこれからできる

どちらを選ぶにしても、「自分がなぜその選択をするのか」を言語化しておくことが重要です。曖昧なまま流されていくと、後から「こんなはずじゃなかった」になりやすい。


まとめ|決断前にやっておくべき「たった一つのこと」

この記事を通じて伝えたかったことは、一つです。

「定年前に、早めに自分の選択肢を整理しておくこと」

再雇用か転職かという問いに、正解はありません。人それぞれの状況、家族との関係、経済的な見通し、体力や健康状態——これらすべてが絡み合って、最適な答えは変わります。

ただ、確実に言えることが一つあります。選択肢は、準備した人にしか生まれないということです。

転職を考えているなら、定年の3〜5年前から少しずつ情報収集を始めておく。転職市場がどうなっているか、自分のスキルや経験がどう評価されるか、家族はどう考えているか——こういったことを、早い段階から少しずつ整理しておく。

再雇用を選ぶとしても、「他の選択肢もあった上で再雇用を選んだ」と言える状態と、「他を考える余裕がないまま再雇用になった」では、選んだ後の納得感がまったく違います。

私のように「気づけば余裕がなかった」という状態にならないために。今この記事を読んでいる方が、まだ定年まで数年あるなら——まず家族と話し合い、自分の状況を整理してみることをおすすめします。それが、どんな選択をするにしても、最初の一歩になります。


注意: 本記事は私の個人的な体験と、一般的な情報をもとに書いています。再雇用や転職に関する判断は、個人の状況によって大きく異なります。詳細については、会社の人事担当者や社会保険労務士への確認をおすすめします。


この記事を書いた人: カズ|60代前半・茨城県南在住・現在再雇用中。事務・管理・総務職を長年経験し、人事業務にも携わっていました。定年後の働き方について、同世代に向けてリアルな情報を発信しています。

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