60代でフリーランスは現実的?|向いている人の条件と社会保険を確保する選択

働き方・生き方

定年後、組織から離れて自分のスキルで稼ぐ「フリーランス」という働き方が、選択肢として頭をよぎる方も多いと思います。自由がある反面、収入の不安定さや社会保障の手薄さといった現実的な厳しさもあります。

本記事では、60代の副業はどう選ぶ?|自分の経験を活かす3つの選択肢で取り上げた副業との違いを整理しつつ、定年後フリーランスの主な選択肢と、向いている人の条件を客観的にまとめます。あわせて、社会保険を確保しながらフリーランスを併用する、という現実的な働き方の選択肢にも触れます。

定年後フリーランスとは|副業との違いと主な選択肢

「フリーランス」とは、簡単に言うと、会社に雇われずに、自分の名前で仕事を受けて稼ぐ働き方のことです。雇用契約は結ばず、案件ごとに業務委託契約を交わす個人事業主としての立場が一般的です。

前回取り上げた副業との一番の違いは、「会社に属しているかどうか」です。副業は、本業の雇用契約を持ちながら、空き時間に追加の仕事を行うスタイル。フリーランスは、雇用契約を持たず、案件単位で自分が仕事を取りに行くスタイルです。

税金面でも、副業の場合は本業の会社が源泉徴収する給与に副業所得を加える形ですが、フリーランスは原則すべての所得を自分で確定申告する必要があります。

定年後にフリーランスとして働く場合、現実的に考えられる主な選択肢は以下のようなものです。

  • 元の勤務先や知人から業務委託契約を受ける(継続型)
  • 専門知識を活かして研修講師やコンサルティングを請け負う(スキル提供型)
  • ライティング、Web制作などをクラウドソーシング経由で受注する(案件型)
  • せどり、ハンドメイド、ネットショップ運営など物販で独立する(物販型)

どのタイプを選ぶかによって、必要な準備も、収入の安定度も大きく変わってきます。

社会保険を確保しながらフリーランスを併用する選択肢

フリーランスとして完全に独立すると、健康保険は国民健康保険、年金は国民年金へ切り替わります。会社員時代と比べて、保険料の全額が自己負担になるうえ、将来受け取る厚生年金の上乗せもなくなります。

そこで、最近注目されているのが「社会保険に加入できる勤務先で働きながら、空いた時間にフリーランスを併用する」という働き方です。

2026年現在の社会保険加入要件

パート・アルバイトでも、以下の要件を満たせば社会保険(健康保険・厚生年金)に加入できます。

  • 特定適用事業所(従業員51人以上)に勤務している
  • 週の所定労働時間が20時間以上
  • 月額賃金が8.8万円以上(年収約106万円)
  • 雇用期間が2か月を超える見込み
  • 学生でない

なお、2025年6月に成立した年金制度改正法により、2026年10月以降は月額賃金の要件(8.8万円以上)が撤廃され、いわゆる「106万円の壁」は実質的に消えていきます。さらに2027年10月以降は企業規模要件(51人以上)も段階的に縮小され、2035年までに完全撤廃される予定です(出典:厚生労働省)。

この働き方のメリット

社会保険料は事業主と折半なので、国民健康保険・国民年金を全額自己負担するより、自己負担額が大幅に軽くなる場合があります。さらに、厚生年金に加入することで、将来受け取る年金が上乗せされます。傷病手当金などの保障も受けられます。

具体的な組み立てとしては、たとえば次のようなパターンが考えられます。

  • 週3〜4日、社会保険に加入できる範囲のパート勤務(=社会保険の基盤を確保)
  • 残りの時間で、自分のスキルや関心に応じたフリーランス案件を受注

定年後にいきなり完全独立に踏み切るのは、不安が大きいと感じる方も少なくないようです。社会保険を確保しながらフリーランスを併用する、というハイブリッドな働き方は、その不安に対する1つの現実解と言えるかもしれません。

ただし、年金受給を開始している場合、給与と年金の合計額が一定額を超えると、年金の一部が停止される仕組みが影響します。このあたりの調整については、働きながら年金は減る?|在職老齢年金と2026年改正で変わったこともあわせてご覧ください。

フリーランスに「向いている人」の条件

フリーランスは自由度の高い働き方ですが、誰にでも向いているわけではありません。向いているか向いていないかを冷静に見極めることが、長く続けるための前提になります。

ここでは、定年後フリーランスに向いている人の主な条件を整理します。

1. 自走できる人

最も大事なのは、「指示なしで自分で動ける」ことです。フリーランスには上司も同僚もいません。何を、いつ、どのようにやるかを、すべて自分で決めて実行しなければなりません。

会社勤めで「指示があってから動く」スタイルに慣れている方にとっては、最大のギャップになりやすいポイントです。

2. 営業・人脈構築が苦にならない人

フリーランスにとって、案件を取ってくることはそのまま収入に直結します。人脈に頼って案件を獲得するケースもあれば、自分でクライアントに営業をかけるケースもあります。

営業活動や人脈づくりが苦にならない、あるいは元の勤務先や業界に既に信頼関係があると、スタートしやすくなります。

3. 収入の波に耐えられる経済的バッファがある人

フリーランスの収入は、月によって大きく変動します。案件が途切れた月の収入はゼロ、ということも珍しくありません。

退職金・年金・貯蓄などの経済的バッファがあると、収入が不安定でも精神的に追い詰められずに済みます。逆に、毎月の生活費を案件収入だけに依存する状態だと、長期継続は難しくなりやすいようです。

4. 自己管理ができる人

フリーランスは、健康・時間・金銭のすべてを自分で管理する必要があります。体調を崩しても誰も代わってくれません。納期管理、経費管理、確定申告まで、すべて自分の責任です。

普段から自己管理が得意な方、あるいはそれを苦に感じない方は、向いている可能性が高いと言えます。

慎重に判断すべき人

逆に、以下のような方は、いきなり完全独立せず、副業や社会保険併用型から始めるほうが安全かもしれません。

  • 組織の中で動くのが好き、上司や同僚との関わりに価値を感じる
  • 毎月の安定収入が精神的に必要
  • 営業や人脈構築に強い苦手意識がある
  • 確定申告など税務関係の事務が苦手

向いているか向いていないかは、性格や生活設計と密接に関係します。無理にフリーランスを選ぶのではなく、自分に合った働き方を見つけることが、何より大切だと言えます。

私自身は今、フリーランスをどう見ているか

ここまで客観的に整理してきましたが、私自身は今、フリーランスとして本格的に独立する具体的な計画はありません。人事業務に携わってきた経験を活かして業務委託で何かを請け負う、という選択肢もあるのかもしれませんが、まだ具体的な検討までは至っていないのが正直なところです。

副業として小さく始められそうなことを、いくつか頭の中で考えてはいるものの、現在は再雇用中の本業もあり、まとまった時間を確保するのが難しいと感じています。

ただ、いきなり完全独立よりも、前章で取り上げた「社会保険を確保しながらフリーランスを併用する」という形なら、いつか現実的になるかもしれない、とは考えています。

ちなみに、このブログ自体も、ある種の小さな表現活動として続けています。収益化には至っていませんし、フリーランスと呼べる規模でもありませんが、自分の経験を整理して必要な人に届ける、という意味では、フリーランス的な働き方の入り口に近い体験をしているのかもしれません。

フリーランスについて考えるとき、最初から「自分が本当にやりたいこと」がはっきり見えている人は、案外少ないのではないかと思います。私自身もまだ模索中です。ただ、収入を補いたい、社会との接点を保ちたい、という現実的な動機から始めても、続けているうちに、自分に合った働き方が少しずつ見えてくる、ということもあるのかもしれません。

始めるための実務|開業届・確定申告・健康保険

フリーランスとして本格的に活動を始める際に、押さえておきたい実務の入り口は主に3つあります。

1. 開業届の提出

「個人事業の開業・廃業等届出書(開業届)」を、事業を開始した日から1か月以内に、所轄の税務署へ提出します。所得税法第229条で定められたルールです。

提出費用は無料で、e-Tax(電子申請)でも提出できます。提出を怠ったことに対する罰則はありませんが、後述する青色申告を選ぶためには、開業届の提出が前提となります。

2. 青色申告承認申請書の提出

開業届と一緒に「所得税の青色申告承認申請書」を提出するのが一般的です。青色申告を選ぶと、青色申告特別控除という大きな節税メリットが受けられます。

  • 65万円控除: 複式簿記 + e-Tax電子申告 または 優良電子帳簿保存
  • 55万円控除: 複式簿記(書面で確定申告書を提出)
  • 10万円控除: 簡易簿記

なお、2025年12月の令和8年度税制改正大綱では、2027年(令和9年)分の確定申告から、e-Tax電子申告と優良電子帳簿保存の両方を満たすと「75万円控除」に引き上げ、書面提出の場合は「10万円控除」に減額される方向で見直しが検討されています(出典:国税庁、令和8年度税制改正大綱)。

青色申告承認申請書の提出期限は、原則として開業から2か月以内です。

3. 健康保険・年金の切り替え

会社員時代に加入していた健康保険は、退職後、以下のいずれかに切り替える必要があります。

  • 任意継続(従来の健康保険を最長2年延長)
  • 国民健康保険(住所地の市区町村窓口で手続き)
  • 家族の被扶養者になる(条件を満たす場合)

それぞれの選び方については、退職後の健康保険、どう選ぶ?|3つの選択肢と2026年改正の影響で詳しくまとめています。年金は、原則として国民年金に切り替えます(前章のように社会保険適用のあるパートで働く場合は厚生年金加入)。

税務関係で不安な点は、最寄りの税務署または税理士に相談するのが安全です。社会保険関係は社会保険労務士、年金関係は年金事務所が窓口になります。

まとめ|フリーランスは「準備してから」が鉄則

定年後にフリーランスとして独立するかどうかは、自由度と引き換えに、収入の不安定さや社会保障の手薄さも受け入れる選択です。向いているかどうかは、性格や生活設計と密接に関係します。

いきなり完全独立に踏み切らず、副業から小さく始めてみる、あるいは社会保険を確保しながらフリーランスを併用する、といった段階的な選択肢も有効です。

収入の補填や社会とのつながりといった現実的な動機から始めても、続けているうちに、自分に合った働き方が少しずつ見えてくる、ということがあるかもしれません。


注意: 本記事は私の個人的な体験と、一般的な制度の概要をもとに書いています。フリーランスとしての働き方や手続きは、個人の状況によって異なる場合があります。詳細については、税務署、社会保険労務士、税理士、年金事務所などの専門家への確認をおすすめします。

主な出典:

  • 厚生労働省「社会保険の加入対象の拡大について」
  • 国税庁「No.2072 青色申告特別控除」
  • 自由民主党「令和8年度税制改正大綱」(2025年12月)

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